マーガレットとヘススの来日・すべての人に心を開いて

 
NHKの調査によると、次の6つの言葉は日本人に最も好まれている言葉だそうです。日本人の心をよく表わしている言葉で、社会生活や自然との調和が大切にされているのがわかります。

ありがとう Grazie・Thank you
思いやり Attenzione verso l’altro・Care for others
健康 Salute・Health
平和 Pace・Peace
美しさ Bellezza・Beauty
正直 Onestà・Honesty

マーガレットとヘスス、そしてフォコラーレ代表団は、4月25日から5月2日まで、東アジア訪問の第二段階として日本を訪れ、その豊かな文化に深く触れる機会を持ちました。

日本の教会:共同体の再構築
今回、この「日出ずる国」の最初の扉を開いたのは、東京教区のタルチシオ菊地功大司教でした。日本のカトリック教会は「小さくて静かです」と語りました。1億3千万人の総人口のうち、キリスト教徒は0.4%にあたる53万6千人。日本では仏教と神道が主要宗教とされますが、両方を信仰する日本人も多いため、さまざまな宗教要素が統合される傾向が見られ、どちらが主であるかを定めるのは困難です。菊地大司教は、日本社会における家庭崩壊は、孤独や疎外感につながっている、とした上で、「共同体の再構築が求められる今、フォコラーレは教会の助けになれるでしょう。まず司教方(日本には16人)に皆さんの霊性を知ってもらい、彼らを通して、キリスト者たちに至るよう勧めます」と語りました。

 

東京駐在のレオ・ボッカルディ教皇大使を訪問した際、「キリスト教徒がわずか2%のアジアにおける、信者の役割は何か?」が話題となりました。教皇大使も兄弟愛のカリスマを広めるようにと勧め、「日本には秩序があり、日本人は互いに敬意を払うことを知っていますが、無関心も多々見られます。コロナ禍の傷をいやすため、人間関係を回復することが必要です」と語りました。

1959年、イジーノ・ジョルダーニ(フォコ)が、カノッサ会のシスター達に招かれて東京をン訪問した際、日本のキリスト教の歴史に神聖なものを見出し「私は教会が生まれつつあるのを見た」と記し、日本の地に一致の精神の最初の種を蒔きました。その後、男女フォコラーレが1976年と77年に開かれ、現在、東京と長崎に3つのセンターがあります。共鳴者賛同者は日本各地に千人余りいます。

日本:近代と伝統、精神性渇望のはざまで

日本人の魂の深みを知る上で、八日間の滞在はあまりにも短すぎると言えるでしょう。ですからマーガレットとヘススにとっては、今回の出会いや交流の一つ一つが貴重であり、明治神宮や超モダンな街・渋谷を訪れることも大切なことでした。多彩な側面を持つ日本は、最先進国の一つに数えられると同時に、伝統が重んじられる国でもあります。社会は同質的で、個人よりも共通の利益が優先され、国民は優れた感受性、優しさ、他者への配慮、労働能力、義務感を備えています。
日本人は、具体的事象から本質的なものを汲み取る「心の感覚」を備えています。今回マーガレットとヘススが最初に出会ったのが、日本各地から集まった若者たちジェンであったのも意味深いことで、素朴で家族的な雰囲気の中、互いのことを語り合う調和のひとときとなりました。このような深い出会いと交わりは、男女フォコラリーニやボランティアたちとの集いでも体験されました。

イエズス会とフォコラーレが共に、世にとって希望のしるしとなれるように
4月29日、東京のカトリック上智大学で、「世にとって希望のしるしとなれるように」と題したシンポジウムが開催され、マーガレットとヘススはパネリストとして招かれました。16世紀に日本にキリスト教をもたらしたイエズス会の持つ聖イグナチオのカリスマ、そしてキアラ・ルービックのカリスマという、二つのカリスマが出会う特別な機会でした。中心テーマは、精神性が渇望される社会宗教的背景における対話と一致です。イエズス会日本管区長レンゾ・デ・ルカ神父、上智大学教授のアガスティン・サリ神父およびホアン・アイダル神父もパネリストとして登壇しました。

二つのカリスマの相乗効果がもたらす大きな可能性は、パネリストたちの話からも感じ取れました。マーガレットは冒頭、今、人類が最も必要としているのは希望であり、自分とは異なる相手ともたゆまず対話を重ねる所にこの希望を見出すことができると語った後、「私たち一人一人にできるのは、小さなまた大きな形で対話をしていくことです。心のこもったあたたかな関係によって、もっと兄弟的な世界が築かれていくでしょう」と結びました。
デ・ルカ神父は、対話は、日本のキリスト教徒にとって最初から彼らのDNAの一部をなすものであり、「迫害を受けながらも、暴力に対し暴力で応酬しなかった彼らを、当時の教皇方は模範として世に示しました」と語りました。サリ神父は、世俗化に直面する日本の教会がキリスト教の霊性を世に提供できるよう、新たな対話の方法を見出す必要がある点について考察しました。
「カトリック教会のシノダリティーは、交わりによって生かされる場合にのみ、一つの答えとなり得ます」とヘススは語り、「交わりとシノダリティーを実践する時、対話は自然と生まれてきます。あらゆるレベルで社会の分極化が進む中、「対話」はさらに必要になってくるだろう 」と結びました。
アイダル神父は、希望について述べながら、「善は悪より強力で、神は常に善の側におられるのだから、私たちが希望を失う理由はありません」と訴えました。
参加者の一人は、今回のイエズス会とフォコラーレとによる共同考察は、新たないのちを生み出す「化学反応」のようなものと言い、「対話には勇気と根気と忍耐が必要で、何よりも自分から始めなければならないと気づきました」と語りました。

マーガレットから日本フォコラーレ共同体へ:すべての人に心を開いて
「神様からいただいた贈り物を分かち合うひとときを始めましょう。」4月29日午後、日本フォコラーレ共同体との集いは、司会者の夏実さんと正木さんの挨拶で始まりました。会場は、コロナ禍の約3年半を経て、初めて共にいられる喜びと感動に満ちていました。集いでは、無関心や社会的距離感に悩まされる社会にあっても、メンバーたちが、日々の生活の中で福音を忠実に実践する生き方が証しされました。日本のキリスト者皆にとっての切実な問題、すなわち、特に新しい世代に信仰を伝える難しさについて質問したボランティアに対し、ヘススは答えています。「あなたがみ言葉を生きているなら、確実にイエスを伝えていることになります。私たちは結果を出すことを考えがちですが、イエスはそれには興味はないのです。彼のお望みは、ご自分のいのちをもって人々に触れること。ですからイエスに私たちのすべてを差し出しましょう。そうすればイエスがお望みのものを、お望みの形で、刈り取って下さでしょう」。

「日本のフォコラーレにメッセージをお願いします」と、最後にマーガレットとヘススへ出された予定外の質問に対して、マーガレットは「私からのメッセージは、『対話』です。誰に対しても心を開くこと。確かに日本ではキリスト教徒は少数ですが、フォコラーレのメンバーである私たちは、勇気をもって他の人々に働きかけ、兄弟愛と平和の世界を築くため新しい道を切り開くよう招かれています」と答えました。
ヘススは「私たちの特徴は、一致を生きること」、「キアラが言うように、私たちは他の人々にとって『神の愛の秘跡(しるし)』です。信仰は共に生きるもの。誰も独りぼっちだと感じないよう、共に前進しましょう」と語りました。

立正佼成会訪問:私たちはひとつの家族

 

5月1日、キアラが42年前に訪問した立正佼成会本部大聖堂に、今回マーガレットとフォコラーレ代表団は招かれました。
佼成会とフォコラーレとの間で続く兄弟姉妹としての交流は、40年以上にわたる歩みです。庭野日鑛(にちこう)会長と娘の光祥さんからあたたかな歓迎を受け、一行は大きな喜びと感動のひとときを過ごしました。数日前にはマーガレット、ヘスス、リタ、アントニオは、光祥さん一家と夕食を共にする機会も持ちました。

立正佼成会は、1938年に庭野日敬氏により設立された在家仏教教団です。日本に約百万人の信者を抱える他、世界各地にセンターが置かれ、様々な人道活動を展開し、平和と人々の幸福を積極的に促進しています。1979年、初めてキアラに出会った庭野氏は「交わりを持ちながら生きていくことのできる特別な人に出会った」と語り、現在に至るまでフォコラーレと佼成会との交流は続いています。この日の式典参加者やオンラインでつながった多くの人々に向かって、マーガレットは
「今日、私たちは一つの大きな家族として集っています」と挨拶し、「平和は、人類にとって最も大切なものです。(…) 私たちは共に、世にとって希望のしるしとなれるでしょう。私たち二つの運動体は共に一つの家族として、最も強力な武器である慈悲と愛を実践しながら、社会を照らす小さな光となれるでしょう」と語りました。

「今日は忘れえぬ一日となりました。兄弟同士であり、多くの共通点を持つ私たち二つの運動体の出会いに感謝します」と庭野日鑛(にちこう)会長は語り、次代会長の庭野光祥さんは、「私たちがこのようであれるのは、対話のおかげです。対話と出会いを私の人生の基礎に据えてくれた祖父の庭野日敬に感謝します」と述べました。
最後にマーガレットは、「今日は、深みある神聖なひとときを経験しました。皆さんから学んだ『いただいたものに感謝することを忘れない』精神を、私も心に留め続けます。より良い世界を築く夢を実現するため、共に前進していく決意を新たにします」と語りました。
マーガレットとヘススの旅の次段階は、オセアニアです。一行は5月3日から9日までフィジーで過ごし、その後5月16日までオーストラリアに滞在します。
次回はフィジーからの報告となります!
Stefania Tanesini
ステファニア・タネズィーニ

ルール(500)