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今月の言葉は、使徒パウロがテサロニケの共同体に送った手紙の締めくくりにある、一連の勧めの一文です。「“霊”の火を消してはいけません。預言を軽んじてはいけません。すべてを吟味して、良いものを大事にしなさい。あらゆる悪いものから遠ざかりなさい。」2 預言と識別、対話と傾聴。これがパウロからの、信仰の道を歩み始めたばかりの共同体への勧めです。
霊のさまざまな賜物のうち、パウロは特に預言を大切にしていました。3 預言者とは、未来を予測する者ではなく、神の視点から個人や共同体の歴史を理解する賜物を持った人のことです。
しかし、すべての賜物は最も偉大な賜物、すなわち愛、きょうだい愛によって導かれるものです。4 ヒッポのアウグスティヌスは、愛だけが、さまざまな状況を前に、どんな態度をとるべきかという識別を可能にすると断言しています。5
すべてを吟味して、良いものを大事にしなさい。1
個人的な賜物だけではなく、周りの人や相談相手、たまたま出会う人の内に、その人の持つ大きな可能性や、豊かな物の見方や考え方に目を向けられるようになることが必要です。大事なのは、どんな人に対しても真心で接し、また自分の視点には限界があることを自覚することです。
このいのちの言葉は、対話や意見交換の場において、モットーともなりうる言葉です。相手に耳を傾けるとき、その人の主張をすべて受け入れるわけではなくとも、相手の話に何か良い点を見出だすことは可能であり、その意味で傾聴は私たちの頭と心を広げてくれます。愛ゆえに私たち自身のうちに無の場所を作り、共に何かを築く可能性を生み出すことです。
すべてを吟味して、良いものを大事にしなさい。
ティモシー・ラドクリフ神父は、カトリック教会のシノドス司教会議に参加した神学者の一人ですが、こう断言しています。「このシノドスで、私たちにできる最も勇気ある行いは、私たちの間で誠実でいることです。自分の疑いや疑問に関して、はっきりとした答えを持っていない事柄について、率直になることです。そうすれば互いに、探求の仲間、真理を乞い求める者として、近づき合うことができるでしょう。」6
これについてマーガレット・カラムは、フォコラリーノたちとの対話のひとときに、こうコメントしました。「考えてみると、自分が本当に考えていることをなかなか言う勇気がなかったことに気づきました。理解してもらえないことへの怖れや、多数意見と全く違うことを言わないためかもしれない。『真理を乞い求める者』になるとは、互いに隣人となる姿勢を持つこと、そこでは皆が神様の求めることを求め、皆で共に善を探している、そのように生きることだと分かりました。」7
すべてを吟味して、良いものを大事にしなさい。
これは、2017年にスペインで「ジェンロッソ・ローカルプロジェクト」として生まれたパフォーマンスアート集団「モザイコ」に参加する、アンティアの体験です。このグループは、スペインの若者たちで構成され、アートとワークショップを通じてきょうだい愛の体験を伝えています。
アンティアは語ります。「私が信じるものとつながります。きょうだい愛の世界、そこでは(子どもたち、初心者の人、傷つきやすい人たちなど)誰もがこのプロジェクトに貢献します。モザイコのおかげで、たとえ問題や苦労が大きくても、もっと一致した世界はユートピアではないと、信じられます。私は集団で活動する中で成長しました。ときには、一見率直すぎる意見を交わし合ったり、自分の考えの方がいいはずだと思っても、あきらめたりすることも多くあります。その結果は、『善』は一つひとつ、私たち皆の手で築かれていく、ということです。」8
すべてを吟味して、良いものを大事にしなさい。
パトリツィア・マッツォーラといのちの言葉編纂チーム
いのちの言葉は聖書の言葉を黙想し、生活の中で実践するための助けとして、書かれたものです。
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1. 日本聖書協会「新共同訳」
2. 1テサ5・19-22
3. 参照:ヨハネパウロ二世、一般謁見、1992年6月24日 No.7
4. 1コリ13参照
5. ヒッポのアウグスティヌス Ep. Jo. 7, 8. 参照
6. T.ラドクリフ神父(ドメニコ会)シノドス(司教会議)での黙想会第3回目「友情」サクロファーノ(イタリア)、
2023年10月2日
7. マーガレット・カラム、フォコラーレ運動会長、フォコラリーノたちとの対話、ロッカディパパ、2024年2月3日
8. モザイコGRLPは、「非暴力で強く」プロジェクトに賛同し、若者に向けた3日間の複合分野的なワークショップを
あちこちの町で開催し、アートを通じて非暴力、平和と対話の意義を伝えることを目指す。